【ニューヨーク=大島有美子】スタートアップやベンチャーキャピタル(VC)との取引で知られる銀行持ち株会社SVBファイナンシャル・グループの株価が9日急落し、前日比60%安で終えた。8日に資本増強のために普通株の発行などで22億5000万ドル(約3060億円)を調達すると発表。新興テック企業など取引先の資金繰り悪化に伴う預金流出の懸念が広がった。
SVBは米カリフォルニア州に本社を構え、傘下にシリコンバレーバンクを持つ。テクノロジーに造詣が深く、シリコンバレーのエコシステムで欠かせない役割を担う。「金利上昇が続き、顧客の現金消費が増えることが予想される」と増資の理由を説明した。
SVBは米連邦準備理事会(FRB)による急ピッチの利上げ前の低金利を追い風に、VCやスタートアップからの預金を集めていた。ファクトセットによると、預金残高は22年3月末には1980億ドルに達し、3年間で3.8倍に膨らんだ。一方で利上げ開始以降は預金が急ピッチで減っている。22年末はピーク時から13%減と、全米の商業銀行全体(同3%減)より減少が目立つ。
8日には米国債など売却可能な有価証券のほぼ全額210億ドルを売却したと明らかにした。金利上昇に伴う債券価格の下落により、税引き後利益ベースで18億ドルの損失を計上した。売却した資金はより短期の債券などに再投資する見通し。ポートフォリオの組み替えで、純金利収入を年間4億5000万ドル押し上げると見込む。
米オッペンハイマーのクリス・コトウスキ氏は「SVBの預金は他の商業銀行より金利に敏感な顧客で構成されている」と指摘する。SVBの直近の預金残高の6割超をテックや医療系の企業が占める。スタートアップ投資が世界的に冷え込むなか、取引先企業が運転資金の確保のために預金を引き出すとの懸念が広がった。
米ブルームバーグ通信は9日、著名投資家のピーター・ティール氏が率いるファンドや複数のVCが投資先の企業に対し、SVBから預金を引き出すように助言したと報じた。こうした動きに対し、SVBのグレッグ・ベッカー最高経営責任者(CEO)は顧客に冷静になるよう呼びかけたという。SVBの株価は9日の時間外取引で同日終値からさらに一時約20%下げた。
SVBの資料によると、VCが投資する米国のテックやヘルスケア企業の約半数がSVBと取引を持つ。スタートアップは新株発行による資金調達が多いが「創業初期に現金収入が限られるなか、研究開発や装置購入の費用がかさむ医薬系などは運転資金を銀行借り入れでまかなうケースが多い」(VC関係者)。SVBはこうした企業が「最初に口座を開く銀行」(同)として知られる。SVBの先行き次第で、スタートアップ業界の資金調達にも影響が広がる可能性がある。
米銀では暗号資産(仮想通貨)関連企業からの預金を集めてきたシルバーゲート・キャピタルが傘下銀行を自主的に清算すると8日に発表した。交換業大手FTXトレーディングの破綻を機に預金が急減し、引き出しに対応するための有価証券売却損で資本が毀損した。SVBの増資発表が続いたことで、9日の米株式市場で米銀株は軒並み大幅に下げた。
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March 10, 2023 at 06:05AM
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米銀SVB株60%安、新興テックの預金減懸念で増資 - 日本経済新聞
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