【ニューヨーク=宮本岳則】米欧の大手銀行が対ロシア金融制裁への対応を迫られている。米シティグループは28日、ロシア事業における融資などの残高が54億ドル(約6200億円)あると公表した。各行ともロシア企業・団体との取引関係を洗い出し、制裁の影響を見極めようとしている。融資の焦げ付きなど直接的な損失に加え、金融取引先の債務不履行など間接的な影響にも警戒する。
シティは年次報告書で2021年12月末時点の地域別のエクスポージャー(残高)を公表した。ロシア向けは54億ドルで、全体の0.3%に相当する。預金を差し引いたネットの残高は10億ドルで、通貨安による損失は為替予約でヘッジしているという。シティは「ロシア・ウクライナの地政学的状況と、経済情勢を引き続き注視し、エクスポージャーやリスクを適切に軽減する」と説明した。
国際決済銀行(BIS)によると、米国の金融機関が保有するロシア向け与信残高は21年9月時点で147億ドルにとどまる。ロシアによる14年のクリミア侵攻で、米政府が対ロシア制裁を始めて以来、米大手銀は積極的な投融資を控えてきた。JPモルガン・チェースやバンク・オブ・アメリカの場合、地域別残高のトップ25位以内にロシアは入っておらず、直接的な影響は小さいとみられる。
それでも経営幹部や内部管理チームは確認や分析に追われている。欧米当局はロシアの一部金融機関を国際決済システム(SWIFT)から締め出すと決めたが、制裁対象はまだ発表になっていない。ある米銀関係者は「ロシアほど大きな国をSWIFTから外すことは前例がなく、現場の負担は重い」と明かす。制裁の内容によっては対ロシア債権の回収が難しくなる可能性もある。
米オッペンハイマーの銀行担当アナリスト、クリス・コトウスキ氏は「米銀にとって理論上最大のリスクは、欧州銀のいずれかが(デリバティブや外国為替取引などで)取引契約の義務を果たせなくなることだ」と指摘する。オーストリアのライファイゼン・バンク・インターナショナルや仏ソシエテ・ジェネラルといったロシア事業の比率が大きい欧州銀行は株価急落に直面している。
ゴールドマン・サックスの銀行担当アナリストによると、オーストリアのラファイゼンはエクスポージャー全体に占めるロシア向け比率が9%と高い。報道向けの声明で「ロシアの子会社銀行は、流動性が非常に高く、資金流入を記録している。資本ポジションも強固だ」と説明した。仏ソシエテの同比率は1.6%、イタリアのウニクレディトは1.7%だった。
米欧銀にとって制裁措置の着実な履行も課題となる。ロイター通信によると、英大手HSBCは27日、ロシア第2位VTBバンクやその関連子会社との取引を巡り、英当局が制裁措置を導入したとして、行内で注意を呼びかけた。米欧の大手銀は制裁対象者を検知するシステムを整備しているが、制裁対象との関係がみえにくい関連団体と取引してしまうリスクを警戒する。
投資銀行事業にも波及しそうだ。金融情報会社リフィニティブによると、ロシア市場ではVTBバンクの子会社が投資銀手数料収入シェアで3割を握っている。米JPモルガンや米モルガン・スタンレーなど米系のシェアは大きくないが、VTBと協力しながら引受業務やM&A(合併・買収)助言を手掛けるケースも多いとされる。VTBが米国の制裁対象になったことで、コンプライアンス(法令順守)の観点から、業務の見直しを迫られる可能性がある。
March 01, 2022 at 03:59AM
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米欧銀、制裁対応急ぐ シティはロシア向け残高6200億円(写真=ロイター) - 日本経済新聞
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