10月から銀行の振込手数料が
一斉に引き下げられる理由
今年10月から、銀行各行が振込手数料を一斉に引き下げる。銀行間の送金手数料が40年ぶりに引き下げられることに伴い、それに上乗せして顧客に求める振込手数料の引き下げを、各行が相次いで決めたためだ。
銀行にとって振込手数料の引き下げは、収益の押し下げ要因となる。どの銀行も好んで手数料を引き下げたくはない。
ここで異色の存在感を放っているのが、石川、富山、福井の北陸3県を地盤とする地方銀行、北國銀行だ。
異色とは、振込手数料の見直しを「攻めの経営戦略」と逆転の発想で捉えている点である。
今年5月に勘定系システムのクラウド化を実現した北國銀行は、北陸3県のキャッシュレス化を経営目標に掲げている。この目標の実現を加速させるため、振込手数料について独自戦略を打ち出しているのだ。
北國銀行は10月から、法人インターネットバンキングを利用した場合、他行あての振込手数料を振込金額、振込回数にかかわらず、1件につき一律330円に引き下げる。ほとんどの銀行が振込金額を3万円未満と3万円以上で線引きし、3万円以上でより高い手数料を設定しているのとは対照的だ。
さらに自行あての振込手数料については、振込金額、振込回数にかかわらず完全無料とする。無条件で無料にしている点も、極めて珍しい。
メディアでは、他行あての振込手数料ばかりが注目されている。だが、北陸3県のキャッシュレス化を本気で推進しようとするのであれば、自行あての振込手数料の無料化の方が意義深いともいえる。
後で詳述するが、銀行にとって大きな収益源となってきた銀行間の送金手数料が引き下げられることになったのは、政府や公正取引委員会が問題視したのがきっかけだ。
銀行間の送金手数料の引き下げを受け、銀行業界は、それに連動する振込手数料の引き下げにも、嫌々ながら応じた。背景には、銀行間の送金手数料が引き下げられることによる「出血」を、最小限で食い止めたいとの思惑がある。
ところが、北國銀行は振込手数料にとどまらず、どの銀行も決して手を付けようとしない、ある手数料の改定にも踏み込んだ。その手数料とは何か。また、振込手数料で「攻めの改定」を行う北國銀行の意図は何か。
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August 19, 2021 at 03:05AM
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