初出場を果たした日本が最高のスタートを切った。視覚障害がある選手がプレーし、4カ国で争う予選リーグの初戦で、12年ロンドン大会銀メダルのフランスに4-0で大勝し、勝ち点3を得た。

前半4分だった。中盤でボールを奪取した42歳の黒田智成が3人を細かいボールタッチで抜き去り、強烈なシュートを決めた。さらに9分にも左隅に流し込み、雄たけびをあげた。「全てのこのために取り組んできた。1つ形になった」。競技歴15年のベテランが勢いづけた。

体格で勝る相手に対して、一気に複数人で囲んで前進を止める守備なども光った。20分間の前半終わり間際の19分には、FKから主将の川村怜が左足でロングシュート。GKのまたを抜く一撃でリードを3点に広げた。後半7分には再び川村がPKで追加点を奪い、守備では無失点に抑えた。

04年アテネ大会から採用された競技で、日本は初出場となった。直前合宿では午前9時の試合開始に合わせて、綿密なシミュレーションを実施。起床時間を4時半から5時にし、朝食の前にアップで自律神経に刺激を入れ、目を覚まして朝食を取るなど、移動時間、国歌斉唱まで行う徹底した予行演習で仕上げてきた。高田監督は「細かく準備をしてきた。開始2、3分の選手の動きで勝てる可能性が高いと思った」、川村は「調整期間も僕らはチャレンジャーなので、もっともっとうまくなろうとやってきました」と胸を張った。

予選各組上位2カ国が準決勝に進出する。6月に日本で開催されたワールドグランプリでは急成長を印象づけており、メダル獲得の可能性はある。過去の4大会でも他国の最大得点は5点で、この日の4点はインパクト十分だった。サッカー男子日本代表、なでしこジャパンと同じユニホームも初めてまとい、選手の士気は上がる。初戦を制し、次戦は4連覇中の世界ランク2位ブラジル、さらに08年大会準優勝で同5位中国の格上2カ国との対戦がカギを握る。

◆5人制サッカー(ブラインドサッカー) 視覚障がいのある4人のフィールドプレーヤー(FP)と障がいのないGKがフットサルと同じ大きさのコートで行う。音の出るボールを使用し、選手はGK、監督、コーラー(ガイド)の声を頼りにプレーする。1980年代から欧州、南米を中心にプレーされ、2001年に日本に上陸。04年アテネ大会で「5人制」としてパラリンピックに正式採用されると、16年までブラジルが4連覇した。日本はアジア予選を突破できず、東京大会が初出場となる。