ファイアーウォール規制違反で露呈した、三井住友銀と日興の癒着体質。銀行業界が求めてきた規制緩和にも影を落としかねない。
SMBC日興証券は案件獲得のために、三井住友銀行と顧客情報を無断で授受していた(左写真:尾形文繁撮影、右写真:今井康一撮影)
証券業界を揺るがせた、SMBC日興証券の相場操縦事件。11月4日、日興と親会社である三井住友フィナンシャルグループ(FG)の役員の処分と併せて、同じグループの三井住友銀行の頭取ら4人の減俸処分が発表された。
その背景にあるのが、同一グループ内の銀行と証券会社の間で、顧客の同意なき非公開情報の融通を禁じる「銀証ファイアーウォール規制」(以下、FW規制)違反だ。
三井住友銀と日興、そして親会社の三井住友FGは、複数回にわたって顧客情報を無断で共有したとして、10月に金融庁から処分を受けた。金融庁の発表文によれば、株式の売り出しや企業買収などを控えた企業に関して、日興が主幹事ポジションなどの案件を獲得できるよう、三井住友銀と日興の間で顧客情報を授受していた。
FW規制違反で露呈した、三井住友銀と日興の「癒着」。今回処分となった事案は、その氷山の一角に過ぎないという指摘は少なくない。
「幹事は日興でお願いします」
「幹事は日興でお願いしますね。もしそれができないとなると……」
ある上場企業の財務担当役員は、メインバンクを務める三井住友銀行の担当者の言葉に耳を疑った。株式の売り出しを検討していると担当者に打ち明けた際の一幕だ。
投資家への売り出しを引き受ける幹事証券に日興を選定しなければ、今後の融資に影響を及ぼしかねない。そういった言外の含みを感じたという。
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