日本を代表する大手金融機関の多くは、大阪で創業した歴史を持つ。各社とも実質的な本社機能を東京に置きつつ、大阪・関西重視を強調する。しかし、財界活動への取り組みなどにその濃淡はどうしても出てしまう。大阪に深く根を下ろすのは、やはりあの銀行だった。特集『「大阪」沈む経済 試練の財界』(全23回)の#15では、歴代「大阪担当」の地元経済界での評判などを基に3メガバンクの「密着度」を明らかにするとともに、証券・保険も含めた金融各社の大阪での地位や存在感を分析する。(ダイヤモンド編集部 岡田 悟)
「大大阪」を物語る住銀旧本店の威容
“腹を割る”大阪商人との関係は?
「土佐堀川に影を映す整然とした窓。壁の薄黄色の穏やかな色合いは、周囲を威圧することなく、かつストイックにそこに佇んでいる」――。
住友グループ広報委員会のホームページでそう紹介されているのは、三井住友銀行(SMBC)大阪本店ビル(タイトル背景写真)である。
大阪の経済の中心地だった中之島から、土佐堀川を挟んだ南の対岸に建つこのビルは、1926年から30年にかけて竣工し、旧住友銀行本店として使われてきた歴史的建造物だ。周囲のオフィスビルが建て替えられて高層化する中、戦前に「大大阪」(だいおおさか)と呼ばれて繁栄した時代の痕跡を残している。
東京への企業や人材の流出を受け、大阪経済の地盤沈下が叫ばれて久しい。大阪で生まれた大手金融機関もまた、名実共に、あるいは実質的に本社機能を東京に移している。
とはいえ、大阪には今なお日本を代表する大企業が存在する。大阪にゆかりのあるメガバンクにとっては当然、東京発祥の銀行グループにとっても、大阪や関西は重要な営業拠点であり続けている。
そして、大阪商人の性分は“腹を割る”。首都東京のようなドライな人間関係とも、本心を巧みに隠して婉曲な表現で腹の内を探り合う京都とも異なり、互いに腹蔵なく本音を打ち明け合って信頼関係を築いていくのだ。
そんな大阪の財界人がいつも重視するのは、各メガバンクの“大阪駐在”幹部だ。正式には西日本担当を名乗るが、彼らの拠点が大阪となるため、異動のたびに注目される。ここで存在感を放つのはやはりSMBCの旧住友銀行出身者だが、他のメガバンクも精鋭を送り込んで対抗する。
次ページでは歴代“大阪担当トップ”の経歴やキャラクター、地元企業からの評判を基に、各メガバンクの大阪・関西への「密着度」を明らかにする。そして、大阪で誕生した日本生命保険や野村ホールディングス、りそな銀行といった金融機関の大阪での地位や存在感を解説する。さらに、大阪への殴り込みをぶち上げた、金融業界の“風雲児”の動きも追う。
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August 30, 2022 at 02:55AM
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