イヌワシのバットマンが、貴重な一本を出した。楽天銀次内野手(33)が今季初の適時打&打点で、チームの4連勝に貢献した。浅村のソロで1点を先制し、なおも4回2死一、三塁で右前適時打。2試合連続のスタメン起用に応えた。開幕1軍スタートも右手首痛で約2カ月離脱。リハビリを経て、東北出身の生え抜き16年目が調子を上げてきた。

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やっと、出た。銀次が一塁へ走りながら、右手を何度も突き上げた。4回2死一、三塁。ソフトバンク和田の外角スライダーに体の開きをこらえた。捉えきった。一、二塁間を破り、一塁上でベンチへもう1度、誇らしげに右腕を上げた。「チームのみんながつないでくれてチャンスで自分に回ってきたので(走者を)かえすことだけを思った。もう1点ほしいところで1点が取れて良かったです」。チームは74試合目。自身は31打席目での今季初適時打、初打点で貴重な追加点を生んだ。

出遅れた分だけ、喜びもひとしおだった。今季は開幕1軍スタートも開幕2戦目、3月27日日本ハム戦での代打1打席を最後に右手首痛で離脱。実戦復帰まで2カ月以上かかった。「早く戻りたいという気持ちで1軍の試合を毎試合見ていましたし、早く野球がやりたいとずっと思っていました」。白球に飢える心を抑えながら、ファンに勇姿を届けるため、地道なリハビリに耐えた。

今年で東日本大震災から10年。節目と言われる1年にも、岩手・普代村出身の銀次は姿勢を崩さない。今年3月11日に「自分はいつも通り必死に、ですね。活躍して被災地のみんなに『銀次、頑張ってるな』『楽天の選手みんな頑張ってるな』と思われるようなプレーを見せていけたら」と全力プレーを誓っていた。言葉を体現した。懸命にバットを振り、グラウンドを駆け回った。

今月9日に1軍復帰し、13試合中スタメン出場は7試合。そのうち6試合で安打を放ち、限られた中で結果を出し続ける。「特に自分の中では調子がいいとは思っていない。1打席1打席をしっかりと気持ちを込めて打席に入っているので、1打席も無駄にしないでこれからもやっていければ」。東北のために、1球、一振りに魂を込め続ける。【桑原幹久】