静岡銀行は10月下旬、山梨中央銀行と資本提携を含む包括業務提携の締結で合意した。静岡、山梨県内でトップ行の両行もマイナス金利に伴う利ざや減で経営が悪化しており、提携に伴う営業地域や業務分野の相互補完によって、今後5年間で100億円の収益効果を見込んでいる。他方、経営規模で山梨中央銀を大きく上回る静銀に提携の利点があるのかを疑問視する金融関係者もいる。【太田圭介】
両行が収益力向上の鍵に位置づけるのが、首都圏での営業強化だ。静銀は神奈川県、山梨中央銀は東京都西部に多くの支店を擁する。大和証券の矢野貴裕アナリストは「両行は店舗網が重複しないよい組み合わせ」と評価。経費をかけず顧客を紹介し合えるというメリットを指摘する。
収益力アップのもう一つの鍵は「証券」。静銀の子会社の静銀ティーエム証券が山梨中央銀の支店に出店する計画があるという。静銀は手数料収入が期待でき、山梨中央銀は証券業務のノウハウを得られる。まさに「ウィンウィン」の提携に見える。
このほか、経費削減策で勘定系システムの共同化も期待がかかる。静銀は2021年、オープン系と呼ばれる新システムに移行する。同じシステムを山梨中央銀が採用すれば、長期的な経営統合の呼び水となる可能性もある。
一見すると、よいことずくめの提携だが、市場の見方は異なる。提携発表前後で両行の株価は小幅な動きにとどまった。両行と同じく「5年間で提携効果は100億円」とうたった千葉銀と武蔵野銀(埼玉県)との業務提携(16年に締結)と類似点が多くて、「従来型と劇的に違う提携でないと市場が受け止めた」(矢野氏)。
「地域密着」を掲げる地銀特有の経営文化も提携の深化の前に立ちはだかる。山梨中央銀の時価総額は約280億円と静銀(約4300億円)の15分の1程度だ。静銀関係者は「買おうと思えば山梨中央銀をいつでも買えるが、『静岡銀行』に看板が変われば、山梨県民に取引を続けてもらうことが心情的に難しいだろう」と話す。
「地銀再編」かかげる菅政権
山梨中央銀は県内に大口融資先が少ない。預貸率(預金に対する融資の比率)は近年、地銀最低クラスの5割台で低迷。静銀との提携による顧客開拓の余地は大きい。直接の利点が少ない静銀があえて提携に踏み切った背景について、金融業界関係者は「政府から地銀全体への再編の圧力がある」とみる。
菅義偉政権は優先施策として「地銀再編」を掲げている。10月28日にあった提携を発表する記者会見で、静銀の柴田久頭取は「監督官庁の指導とかに基づくものではない」などと打ち消したが、静銀関係者は「(地域の)核となる銀行にいろいろな銀行を寄せることは必要」として、地銀の合従連衡に肯定的な見方を示す。
県内は地銀(第二地銀を含む)4行と信用金庫9社がある。営業エリアが競合する金融機関との提携は難しい。「地銀を減らす」ことにこだわる金融庁の思惑と必ずしも一致しない「緩やかな提携」が県域を越えて続く可能性もある。
静岡銀行
静岡市に本店を置く県内最大の地方銀行。1877年に設立の静岡第三十五国立銀行を源流とし、1943年に合併で現在の行名となった。連結総資産は13兆2266億円、全国の地銀でも有数の規模を誇る。東京都、神奈川、愛知県、大阪府を含めて約200店舗を展開し、米ニューヨークなど海外にも5拠点を置く。連結の従業員数は約3900人。
山梨中央銀行
1941年の設立で、甲府市に本店を置く山梨県内で唯一の地方銀行。前身は1877年に創業した第十国立銀行。連結総資産は3兆7573億円。東京都、神奈川県を含めて国内92店舗を持ち、都内での業務拡大も進める。インターネットを介した顧客相談やスマートフォン向けアプリなどのデジタル化に力を入れる。連結従業員数は約1700人。
November 04, 2020 at 07:26AM
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