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「全集中」の心理戦、▲5三銀の真相…竜王戦・仁和寺対局 - 読売新聞

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 豊島将之竜王と羽生善治九段が争う「第33期竜王戦七番勝負」は、第3局を終えて豊島竜王が2勝1敗と一歩リードしている。羽生九段の発熱・入院により、第4局が延期という異例の事態となったが、福島での代替イベント「歓迎の夕べ」は将棋ファンの注目を大いに集めた(こちら)。今シリーズ一番の熱戦だったと評判の京都・仁和寺での第3局について、スナップを中心にした日誌編と、局面図をもとに終盤戦を読み解く観戦記編で振り返る。

 11月6日午後、竜王戦一行は京都・仁和寺に到着した。対局前日、日が傾きつつある午後5時半過ぎ、ライトアップされた境内を豊島竜王と羽生九段は散策した。仁和寺関係者によると、紅葉した木々が美しく見えるようにライトアップする場所や光の強さを工夫しているという。昨年、対局者が仁和寺の境内を散策したのは夕方くらいだった。豊島竜王は「日があった去年と、日が沈んだ今年と、違う印象の境内を見ることができて印象的です」と語った。

 仁和寺は敷地が広大で、正面の門から奥まで、ゆっくり歩くと10分ほどかかる。国宝である金堂に着いた両対局者。立て札には「撮影禁止」とある。だが、一行を案内する瀬川大秀門跡(もんぜき)は「みなさん、ぜひ撮影してください」と報道陣を招き入れた。寛大な心で国宝をバックに記念撮影が許可された。「鶴の一声」ならぬ「門跡の一声」だ。関係者がほっこりなごんだ瞬間でもあった。

 「京都には10回以上来ています」という羽生九段。仁和寺を訪れるのは初めてだったという。金堂での記念撮影を終えた午後6時前、前夜祭に向かう途中、第2の門のところで足を止めた羽生九段。「ここからの眺めは、絵はがきのような風景ですね」と、しみじみ語る。その言葉を受け、記者は羽生九段の横から広角でシャッターを切った。これが世界遺産・仁和寺の夜の輝きか。

 11月7日は対局初日。落ち着いた様子で駒を並べる両対局者。対局場である仁和寺の宸殿(しんでん)の広さが印象的だ。欄間も襖絵(ふすまえ)も美しい。そして何より天井の高さは圧巻だ。タテ位置で写真を撮影したのは、盤面を映す天井カメラの位置が、これほどまで高い位置にあることを示したかったため。設営スタッフの中には、天井カメラ設置の達人がいて、心の中で拍手を送った。

 瀬川門跡らが初手に立ち会い、羽生九段、豊島竜王が1手指したところで関係者は退室した。対局場付近では、当然声も出せない。関係者らは、そろりそろりと廊下を歩いて宸殿を後にした。そこにいる人を厳粛な空気が包み込む。それが将棋のタイトル戦という舞台だ。

 お寺での対局。和式建築は密閉空間ではない。対局室には外から寒い空気も入ってくるが、豊島竜王はストーブの加減や、置く位置で好みの室温に調整していた。けっこうこまめにストーブの具合を確かめていた豊島竜王。その様子が興味深かったので、少し離れた場所から望遠レンズでシャッターを切った。

 日が傾くと、仁和寺の廊下は真っ暗で足元の視界が悪くなる。両対局者は、手洗いに立ったりするため、夜は廊下に灯籠を置いて明かりを確保した。仁和寺の舞台に映える「照明」だと感じた。だいだい色の暖かい光が連なり、特別な場所で竜王戦が行われていると実感できるひとときだ。

 11月8日の朝。2日目の対局再開を迎え、立会人の福崎文吾九段が羽生九段の封じ手を開封し、両対局者に見せる。とにかくじっくり見せるのだ。封じ手を広げるポーズを何秒もとり続ける。意図は不明だが、カメラマンへの配慮だろうか。「妖刀流」の異名をとる福崎九段だけに、その所作は独自路線だ。

 長い中盤戦になることを見越し、記者は検討室を出て周辺散策に出かけた。仁和寺境内の木々は紅葉し、風景に見入る観光客もいる。インターネットで竜王戦七番勝負を中継しているAbema(アベマ)のスタッフも、境内の風景を撮影し、映像素材を収集していた。

 境内のもみじが鮮やかに赤く染まっている。こういう時にズームレンズの威力が発揮される。年配の女性も、スマホでもみじを熱心に撮影していた。「そこのお兄ちゃん、ちょっとどいてくれる」と言われてしまった。境内を散策する観光客は女性の姿が目立った。やはり京都は女性人気が高い観光地だ。

 京都市北西部に位置する仁和寺の徒歩圏内に龍安寺というお寺がある。そこを目指して15分くらい歩いたところで、龍安寺参道商店街に差し掛かった。たなびくカラフルな旗が目に留まり、シャッターを切った。山に囲まれた閑静な場所だと実感した。

 龍安寺も女性の姿が多かった。ただ、紅葉シーズンだけに京都は例年だったら、もっとにぎわうだろうなと思った。今年はコロナ禍ということで、外国人観光客を目にしない。そんな「変化」を肌で感じた。そこから山道に迷い込んだりしながら仁和寺へと戻り、計測した歩数は1万歩を優に超えていた。

 対局2日目の昼食休憩の時間。特別観戦プログラムの参加者が座る部屋の後方に入り、そこから対局室がどう見えるかをファインダー越しに確認した。記録係の高田明浩三段を遠く感じる。仁和寺の宸殿は、やっぱり広い。豊島竜王と羽生九段が名前を揮毫(きごう)した「竜王戦」の木の看板も壮観だ。

 2日目の午前、記者と観戦記を担当する高野秀行六段は「羽生九段の体が重そうだ」とか「羽生九段の目の下のクマが濃い」という話をしていた。既に、体調が悪かったのかもしれない。昼に仮眠を取ったか、羽生九段は寝癖をつけて対局室に戻ってきた。大きくはねた寝癖は羽生九段のトレードマークだ。「宇宙アンテナ」の異名もあり、好調の証しともされる。ここから羽生九段は形勢を盛り返し、難解な終盤戦に突入していく。ここまでが写真紀行の「日誌編」だ。

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November 20, 2020 at 04:00PM
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