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コラム:来年の国内銀預金減少はあるか、新NISAやインフレが揺さぶり=大槻奈那氏 - ロイター (Reuters Japan)

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コラム:来年の国内銀預金減少はあるか、新NISAやインフレが揺さぶり=大槻奈那氏

 11月24日、米国の堅実な個人消費を支える原動力として注目を集めてきたのが、コロナ禍の期間中に発生した過剰貯蓄である。大槻奈那氏のコラム。写真は東京都内のスカイツリーから2021年撮影(2023年 ロイター/Marko Djurica)

[東京 24日] - 米国の堅実な個人消費を支える原動力として注目を集めてきたのが、コロナ禍の期間中に発生した過剰貯蓄である。個人の消費性向が高いとされる米国でも、足元における大幅な預金減少はまれだ。その枯渇は来年のリスク要因の一つとされる。

<コロナ後も減らない国内銀預金のなぞ>

ところが、日本の銀行の個人預金残高は一向に減らない。2023年9月末時点の銀行と信金を合わせた個人預金合計額は、コロナ前の2019年9月比で16.2%増の682兆円に上る(信組やその他の金融機関は含まれていない)。前月比でも前年同月比でも増加している。

階層別でみると、米国では、特に低所得者層の預金減少が大きいが、日本では、最少層の300万円未満の個人預金の平均残高はほぼ横ばいだ。この層の口座数はコロナ前から2.7%減少する一方、一つ上の区分の300万円超─1000万円の口座数は10.4%も増加しており、それ以上の口座数は27.7%も増加している。口座残高が300万円未満だった人々が、それ以上の口座規模にシフトしたとみるのが自然だろう。

このような日米の差は、なぜ発生しているのだろうか。それを考える前に、米国の預金減少の背景を整理する。

まず、コロナの行動制限からの解放が、消費を活発化させているという考え方がある。また、高インフレの結果として消費額が膨らんだいるという指摘もある。さらに必要な耐久消費財等の値上がりへの不安で、買い急ぎが発生しているという面もあるとみられる。預金への不安でMMF(マネーマーケットファンド)への資金流出もあったし、株価の上昇で個人の有価証券投資も増加したとみられる。

しかし、これらについて、金融システムへの不安を除けば、日本にも十分当てはまるはずだ。ならば、今後はこのような状況が変わっていくとも考えられるのではないか。

日本ではまだ、インフレは始まったばかりだ。値段が上がる前に買っておかなかったことで後悔したという経験が、まだ希薄なだけなのかもしれない。預金に放置して目減りしてしまったという実感もまだ、わいていないのだろう。だとすれば、時間とともに米国のような行動様式が見られても不思議ではない。

<新NISAで預金流出なら、何が起きるのか>

銀行から流出した個人預金は、例えば、旅行や耐久消費財等の購入など、リベンジ消費に向かうかもしれない。しかし、それ以上に可能性が高いのは投資である。インフレに対する意識もあり、投資意欲は高まりつつある。

おりしも来年1月から新NISA(少額投資非課税制度)がスタートする。上限1800万円という金額規模や恒久措置になることで、現行のNISAに比べて認知度の上昇が早い印象だ。1963年から1988年まで、預金の非課税制度の「マル優」が貯蓄増加の一因となったが、今回は、有価証券投資の非課税枠が、マル優の6倍の規模となることは注目に値する。

では、銀行預金の取り崩しが起こるとすると、どの程度の規模になるのか。2000年からコロナ前の2019年まで、個人預金残高は年2.5%ずつ増加した。パンデミック宣言以降、預金額はそれまでのトレンド線から大きく上振れた。この上振れた部分が、取り崩されると仮定すると、現在の預金残高の約5%、34兆円が取り崩される計算となる。

データが遡れる1970年以降で、銀行も信金も、預金額が前年比で減少したことは一度もない(半期データ)。比率にすると小さくも見えるが、預金の減少は未曽有の出来事となる。

銀行経営にはどのような影響を与えるだろうか。もちろん、各行とも預貸率が低いので資金繰り上の問題はないだろう。しかし、ALM(資産リスク管理)への影響は大いにありうる。現在、銀行は契約上はすぐに引き出され得る普通預金でも、その一部は粘着性が高い「コア預金」であるとして、金利リスクの計算をしている。

しかし、個人預金の引き出しが現実のものとなれば、コア預金の金額は減少しうる。その場合、銀行が負っている金利リスク量が計算上増加するため、銀行のリスクテイク力が低下する可能性がある。

また、預金の減少は、銀行収益にも一定程度影響を与える可能性がある。銀行は、中長期金利の上昇をてこに、これまでよりは預金を有効活用し、投融資のインカムゲインを増やすことを視野に入れつつある。

個人の顧客基盤が未成熟な新興系銀行には、より大きな影響が出る可能性がある。そうなると、預金競争が新興系の銀行に端を発し、その他の中小銀行にも競争が広がるかもしれない。銀行間の本格的な預金獲得競争が起これば、1990年代以来だろう。

これらのシナリオは、先走り過ぎかもしれない。結局、このまま個人預金の増加傾向が粛々と続く可能性も十分ある。

しかし、コロナ禍の急激な預金増、約40年ぶりのインフレ、投資非課税枠の大幅拡大等、これまでにない様々な動きが重なる中では、シナリオの一つとして念頭に置いておくべきだろう。

(編集:田巻一彦)

(本コラムは、ロイター外国為替フォーラムに掲載されたものです。筆者の個人的見解に基づいて書かれています)

*大槻奈那氏は、ピクテ・ジャパンのシニア・フェロー。東京大学卒業、ロンドン・ビジネス・スクールでMBA、一橋大学ICSで博士(経営学)。スタンダード&プアーズ、UBS、メリルリンチ、マネックス証券などでアナリスト業務に従事。2022年9月より現職。名古屋商科大学大学院教授を兼務。

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November 24, 2023 at 10:33AM
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