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50年トラブルなしは「単なる幸運」 全銀システム障害に見る構造問題 - 日経ビジネスオンライン

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 例の全国銀行データ通信システム(全銀システム)は1973年に稼働して以降、金融機関の利用者に迷惑をかけるようなトラブルはなかったそうだね。だから、今回の大規模システム障害を痛恨事とする関係者もいるようだが、私はむしろ「50年間も重大なシステム障害を起こさなかったのは大したものだ」と褒めていた。だけど、やはりシステム障害はたまには起こったほうがよいな。システム障害に関する2023年12月1日の記者会見の内容からつくづくそう思ったよ。少しは痛い目に遭わないと組織はボンクラ化するからね。

 全銀システムが大規模なシステム障害に陥ったのは2023年10月10日のことだ。三菱UFJ銀行やりそな銀行など10の金融機関から他行宛ての振り込みができなくなって大騒ぎになった。しかも、トラブルは当日のうちには収束できず、翌11日も含め丸2日にわたって障害が続いたのだから穏やかではない。ただねぇ、システム障害そのものは避けられない。全銀システムのような社会インフラを担うシステムについては、特に「絶対に障害を起こしてならない」と力む人が多いが、そいつは無理な相談だ。

 その意味で、50年間も重大なシステム障害を起こさなかったのは大したものだ。もちろん今回は大ごとのシステム障害だ。運営主体の全国銀行資金決済ネットワーク(全銀ネット)とシステム開発や運用を担うNTTデータは50年間の無事故をもって免罪されるわけではない。ただ、少し前の「極言暴論」の記事にも書き込んでおいたが、現場の技術者はかなり気の毒だ。50年間の実績も「今までシステム障害を起こさなかったのに、なぜこんな大規模障害を引き起こしたんだ」と非難の材料にされてしまった。まさに「システムをきちんと動かしても褒められず、止まったときだけ怒られる」の典型例といえる。

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 ところが、12月の記者会見で全銀ネットやNTTデータが語った内容を吟味した結果、評価を大幅に修正せざるを得なくなった。「50年間も重大なシステム障害を起こさなかったのは大したもの」ではなく、むしろ「50年間も重大なシステム障害を起こさなかったのは単なる幸運」と評価すべきだったのだ。会見の場で語られたシステム障害の原因があまりにトホホなこともあるが、むしろ今後の対策のほうがもっと問題だった。要するに「えっ、今までそんなこともやってなかったの」と驚愕(きょうがく)してしまったのだ。

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 例えば「全銀システムの開発体制が多重下請けになっているのでは」との質問に対して、NTTデータは「一定範囲を(下請けベンダーに)委託している。どの会社に再委託しているのかといった流れや成果物の確認、品質管理をしていたにもかかわらず、こうした事案が出てきたことは非常に反省している」とした。その上で「中身の把握にはもっと努力しなければいけない。主要な業務は(下請け任せにせず)NTTデータが入り、開発プロセスに脆弱性がないかや再発防止策が機能しているかなどを評価していく必要がある」と語っている。

 要するに、下請けベンダーへの丸投げは否定したものの、ほぼ「お任せ」状態だったわけだ。一方、全銀ネットの場合はNTTデータなどへの丸投げ状態だったようだ。何せCIO(最高情報責任者)も置いていなかったというからな。全銀ネットによると「保守管理を含めたシステムに詳しい人に(CIOに)就任してもらおうと考えており、現在選定中」とのことだ。全銀システムなどの運営がメインの業務なのにと、さすがに驚いてしまった。こうした話を聞いてしまうと、よくもまあ50年間ご無事でと思ってしまうわけだ。

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January 11, 2024 at 03:00AM
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