[ニューヨーク 21日 ロイター BREAKINGVIEWS] - 米ウォール街が行動を起こす動機に不信感を持つ政治家は、巨大銀行の台頭について険悪な口調で警鐘を鳴らしている。その意味で、三菱UFJフィナンシャル・グループ傘下のMUFGユニオンバンクを80億ドルで買収する、と21日に発表した地銀最大手USバンコープ に対しても、彼らが厳しい態度を取るのは間違いない。
ただ全体のバランスを考えれば、これは有益な案件と言える。
アンドリュー・セセレ最高経営責任者(CEO)率いるUSバンコープは、ユニオンバンク買収によってカリフォルニア州第6位から第5位の銀行に繰り上がる。想定している年間の経費節減額は9億ドルと、ユニオンバンクの非金利費用の40%に相当する。これはPNCファイナンシャル・サービシズが昨年、スペインの大手行BBVAの米国事業買収を表明した際に示した同比率35%より高い。
また、USバンコープの買収額はユニオンバンクの有形資産価値の約1.3倍で、自らの株価純資産倍率を下回る。つまり株主にとって、不満に思う理由は存在しない。
規制当局は別の考え方をするかもしれない。バイデン大統領は当局に、大手銀行の合併審査をもっと厳格化するよう要請している。しかし、ロサンゼルス市などUSバンコープの事業が拡大する市場のほとんどは、激しい競争が繰り広げられているか、既により大きな銀行の手中にある。
例えばオクスナード・ベンチュラ・サウザンド・オークス地域では、USバンコープがユニオンバンク取得後に確保できる預金量のシェアは7%にすぎないことが、連邦預金保険公社(FDIC)のデータから読み取れる。この地域の預金は、ウェルズ・ファーゴ、バンク・オブ・アメリカ(バンカメ)、JPモルガンの3行が合計で68%を握っている。
だからこそ今回のUSバンコープのような案件は、慎重さを維持しつつも歓迎すべきだ。先の3行は全米レベルでも預金量シェアが合わせて25%を超えており、各地でくまなく事業を展開している。それが彼らに巨大な資金力をもたらしている。
JPモルガンが昨年、技術開発に投じたのは100億ドル強だが、USバンコープの投資額は13億ドルだった。バンカメは今年上半期中に403件の特許を申請し、6000近くの投資家が構築したポートフォリオを保有している。平均的な地銀ではとても太刀打ちはできない。
とはいえ、米下院金融サービス委員会のマキシン・ウォーターズ委員長(民主党)のような政治家を説得するためのハードルはもっと高い。ウォーターズ氏は、新たな巨大銀行の誕生を公然と非難し、委員会の公聴会に多くの大手行CEOを引っ張り出してきている。
今のところUSバンコープのセセレ氏は標的にされていないが、同氏を追及する光景はテレビ映えしてもおかしくない。まして選挙区がロサンゼルスのウォーターズ氏にとって、USバンコープの案件は取り上げるのにうってつけだ。今回の買収が地元社会に及ぼす影響に関する質問をぶつけるのは確かに公平な姿勢でもある。
それでも、USバンコープの顧客全体にとってみれば、買収が実現する方がそうでなくなるより望ましい。
●背景となるニュース
*USバンコープは21日、三菱UFJフィナンシャル・グループ傘下のMUFGユニオンバンクを現金、株式合計80億ドルで買収すると発表した。
*この統合でUSバンコープは西海岸地域における融資残高が3550億ドル、預金量が5270億ドルに膨らみ、預金量ベースでカリフォルニア州第6位から第5位の銀行に繰り上がる。
*USバンコープはユニオンバンク買収により、税引き前で年間9億ドルの経費節減を想定している。ただユニオンバンクのフロント部門の雇用は維持し、ユニオンバンクが支店を置いている地域から撤退しない方針を示した。
*統合作業は来年6月末までに完了する見通し。三菱UFJは今後の米国事業について、モルガン・スタンレーとの提携や他の部門を通じて法人取引と投資銀行業務に専念する。
(筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています)
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September 22, 2021 at 08:59AM
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コラム:USバンコープのMUFG傘下銀買収、米金融界に望ましい訳 - ロイター (Reuters Japan)
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