[ワシントン 5日 ロイター BREAKINGVIEWS] - 米銀に対する自己資本規制がまたもや揺れ動いている。連邦準備理事会(FRB)は大手行を対象にした自己資本規制である「補完的レバレッジ比率(SLR)」の算出規定の緩和措置を3月末で打ち切った。大手銀はこの緩和措置のおかげで思うままに米国債を大量購入してきただけに、浮かぬ顔だ。レバレッジ規制緩和はFRBにとっても役立っているため、救済策が講じられるかもしれない。しかしFRBがそれと引き替えに別の自己資本規制を強化する可能性もある。
昨年の新型コロナウイルス流行を受けてFRBは、SLRを算出する際に分母となる総資産から、銀行が保有する米国債と銀行がFRBに預ける準備預金を除外する一時的な緩和措置の導入を決めた。この措置により大手銀は、FRBが大手銀の健全性を審査するときに使う指標の1つで基準に抵触することなく米国債を大量に購入し、証券をFRBに売却することが可能だった。
この緩和措置のおかげで銀行は融資の余地が広がっていた。例えばジェフリーズによると、JPモルガンのレバレッジ比率は昨年第4・四半期に6.9%だったが、緩和措置がなければ5.8%になっていた。米大手銀はレバレッジ比率を5%以上に維持するよう義務付けられている。
ただ、緩和措置の恩恵を受けていたのは銀行だけではない。FRBは景気が回復するまで月額800億ドル程度の米国債を購入することになっており、そのためには米大手銀の手助けが欠かせない。中銀の準備預金は、銀行が保有証券をFRBに売却し、支払いを受けると増加するが、既に近く4兆ドルを突破して2020年2月の2倍以上に膨らむと予想されている。レバレッジ比率算出の際に預金準備を総資産に含めるようになれば、融資のようなほかの業務を行う余地は小さくなるだろう。
FRBは妥協策として自己資本規制の見直しを検討している。しかしリベラル派上院議員のエリザベス・ウォーレン氏など急進派の政治家は、銀行が無償でプレゼントを手にするは見たくないと思っている。FRBは通貨監督庁(OCC)など他の監督機関からの支持も必要としているが、OCCは銀行の裁量余地を広げることに乗り気ではない。
ありそうな妥協案は、資産のリスク性を考慮しないレバレッジ規制を緩和する一方、規制当局にとってもう一つの主要指標である、資産のリスク性を反映した自己資本比率を引き上げる措置だ。自己資本比率は今でも米国債保有や準備預金の影響を受けにくく、FRBは大手銀に的を絞りさえすれば最低基準を容易に引き上げることができる。銀行は、自己資本を巡る1つの厄介事が別の厄介事に置き換わっただけだと感じるかもしれない。
●背景となるニュース
*FRBが新型コロナウイルス流行を受けて導入した、「補完的レバレッジ比率(SLR)」算出規定の緩和措置が3月31日をもって終了した。
*この特例措置は米国債市場の緊張を緩和するために導入され、大手金融機関がSLRを算出する際に保有米国債と準備預金を分母となる対象資産から除外していた。
*FRBはSLRの見直しについて近く意見公募を行うと発表した。
(筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています)
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April 09, 2021 at 11:03AM
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コラム:米銀の自己資本規制見直し、一方的緩和は見込めず - ロイター (Reuters Japan)
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