三菱UFJ信託銀行は、情報銀行サービス「Dprime」を7月1日からスタートした。
年齢や職業、居住地、年収など個人のデータを「情報銀行(Dprime)」に預け、企業から個別に「オファー」が届くという仕組みのサービス。ユーザーが自分の個人情報をDprimeに登録しておくと、興味分野に沿ったオファーが届き、クーポンやイベント参加などの特典(ギフト)を取得できる。
Dprimeのアプリでは、「本人情報」「ライフスタイル」「行動履歴」「資産情報」などの情報を登録できる。
本人情報は、免許証やパスポートをeKYCで本人確認し、アプリだけで登録を完結可能。ライフスタイルについては、About Meと呼ぶ65個の質問に応え(すべての質問に答える必要はない)、企業はその情報を使ってユーザー属性ごとにオファーを出せる。
行動履歴は、GPSを使った位置情報を取得・蓄積できるもの。資産情報はMoneytreeと連携して、銀行の残高情報や取引情報クレジットカードの利用明細などを登録できる。
企業からのオファーは、登録情報をもとに属性を把握して、限定されたユーザーに提案される。オファーを見たユーザーのデータは、この時点では企業には公開されず、ユーザーがオファーを応諾する手続きを初めて企業にデータ提供される。
オファーの例としては、「先端テクノロジーを使ったスマートシューズ体験」、「サステナビリティで注目される植物性の肉を使った料理の割引ギフト」「美容に興味がある人へ栄養価に配慮した新商品のギフトチケット」など。参加企業は、銀座千疋屋やオーダースーツの銀座英國屋、アシックス、藤田観光など。アシックスの例では、興味を持ちそうなユーザーにマスクを提供する。7月1日時点での参加社は26社で、現在40~50社との話し合いを進めているという。
ユーザー側からみたDprimeの主な機能は「データを預ける」「オファーに応じる」「ギフトを受け取る」の3点。三菱UFJ信託銀行では、「興味や関心ある分野の企業と“だけ”繋がれ、オファーにより自分では気づかなかった興味などに気づける」点をユーザーにアピールしていく。「毎日電車でオファーを見るのが楽しみになるサービスにしたい」(三菱UFJ信託銀行 長島巌社長)という。
また、Webサイトやサービスごとに、ユーザー情報を登録する必要がなく、様々な企業と繋がれる点も特徴とする。
企業側から見たDprimeの特徴は「データ価値が高いこと」。Dprimeは本人確認済みでかつ資産情報や移動データも取得できるため、「データの質が高い」(三菱UFJ信託銀行 経営企画部デジタル企画室長 田中利宏氏)という。また、一般的な、WebサービスやECサイトで取得した個人情報は、そのサービス側で管理され、生産者など商品を納入した側には開示されない。一方、Dprimeはユーザーの許諾のもと住所なども取得できるため、誰に売ったか、誰が興味を持っているかなどのデータも取得できるという。
なお、データの2次利用は認めず、Dprimeに登録した個人と企業の間だけでのデータのやりとりとなる。
ビジネスモデルとしては、Dprimeに出店する企業からの手数料が中心となる。料率は非公開だが、通常の出店だけでなく、データの「絞り込み」でも一定の対価を徴収。例えば年齢や職業、年収などで絞り込むことで、ターゲットユーザーを限定できるため、より適切な「オファー」を出せるようになるという。
今後は、200社程度まで出店者を増やすほか、データ分析を強化し、ユーザー体験の向上を図る。また、EC機能を提供し、好きな商品やサービスをアプリ内で購入できるようにする。さらに企業の商品開発に参加できるようにするなど、共創マーケティングのプラットフォームも目指すという。
情報銀行が目指すもの
Dprimeでは、今後2~3年でアプリダウンロード100万を目標とする、ただし、「ユーザー数も重要だが、ポイントゲッターだけでなく、しっかり情報に価値を感じる人のMAU(月間アクティブユーザー)を増やしたい」と説明。収益化については、「初期コストを3年ぐらいで回収して、その後に黒字化のイメージ」という。
長嶋社長は、Dprimeの目標を「個人のプライバシー保護と企業のパーソナルデータ活用の両立。ユーザーに信頼していただき、それをレバレッジして企業・個人のコミュニティづくり。いい意味での場の提供を目指していきたい」とした。
発表会には、Dprimeアンバサダーに就任した元サッカー日本代表の中田英寿氏も参加。日本の伝統産業などに詳しく、オンラインストアの「にほんものストア」も手掛けているが、「データドリブンな社会になってきて、データの扱いは重要だが、自分が関わる伝統産業の一番弱い部分。どこで誰に売れているのか把握できておらず、昨年の実績に応じて商品を作るといった、ある意味『賭け』のようなビジネスが常態化してしまっている。データをみながら、『こういう味が好まれる』『こういう場所でこういうもの売れる』とかわかるようになってくると、効率的な経済活動ができるようになる」とコメント。地酒や伝統工芸品を首都圏につなげる役割を担っていきたいとした。
July 01, 2021 at 02:28PM
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