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「感謝しかない」銀熊賞の浜口竜介監督 トークイベント「まちで映画が生まれる時」 - 神戸新聞

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 第71回ベルリン国際映画祭コンペティション部門で最高賞に次ぐ審査員大賞(銀熊賞)を受けた「偶然と想像」の浜口竜介監督を迎え、「まちで映画が生まれる時」と題したトークイベントが神戸市中央区のデザイン・クリエイティブセンター神戸(KIITO)で開かれた。浜口監督が神戸で撮影した映画「ハッピーアワー」(2015年)の協力者も集まり、会場は同窓会のよう。温かい空気に包まれ、それぞれの映画愛を語った。(片岡達美)

 「ハッピーアワー」の舞台は京都になったかもしれないそうだ。東日本大震災の被災地でドキュメンタリー3部作を制作後、次は関西で、と考えていた浜口監督。京都での撮影をイメージしていたが、その才能にほれ込んだ神戸の人たちが神戸に呼び寄せた。

 神戸映画資料館支配人の田中範子さんは、浜口監督の東京芸大大学院修了作品「PASSION(パッション)」を上映してからの縁。その後も「新作を見るたび、『すごい!』と感動していた」

 田中さんは神戸に来てもらうために人脈を駆使した。その一人が長田区を拠点に文化活動を応援している「肉のデパート マルヨネ」専務の正岡健二さんだ。正岡さんは「ハッピーアワー」の撮影中、長期滞在できる須磨区板宿駅前の家を提供し、そこで浜口監督、脚本の野原位(ただし)さんらが“合宿”。2人は「坂を上がると海が見える。日々、眺めた風景を映画にも映した」という。暮らしの中から生まれた表現が作品を彩った。

 「何度も飲みに行きました。浜口監督は安上がりだった。唐揚げを食べさしといたらいいから」と正岡さんが笑わせる。「そこで雑談を交わす。たわいないことだが、そんな積み重ねがコミュニケーションを深いものにした」

 映画資料館だけでなくNPO法人ダンスボックスなど、長田には文化を介するネットワークがあった。「そこに監督がいて、走り回るスタッフがいてという映画の仕組みが入ってきた。おかげで地元の者が気付いていない街の良さを発見することもできた」と正岡さんは振り返る。

 浜口監督は「神戸に来たのは文化を担う人の顔がはっきり見えたから。何ができるのか全く分からない段階から『やったらいいじゃない』と背中を押してくれた。神戸には感謝しかない。今日は頭を上げられません」といいながら、終始いたずらっぽい笑顔だった。

 浜口監督の作品は、受賞作「偶然と想像」が年内に、それに先駆けて村上春樹さんの短編を原作とする「ドライブ・マイ・カー」が夏に公開予定。

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April 03, 2021 at 11:51AM
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