<ショックに備える金融機関に対し、家計は生活費の支払いのために貯蓄を取り崩して借金を増やしており、遠からず消費を減らし始めるだろう。インフレがここまで進んだら、いったん失業を増やすしか選択肢はない>
アメリカでは景気後退への不安が高まっており、金融機関の現金保有残高が記録的な額にのぼっている。その一方、一般国民は家計のやりくりに苦労している。
2022年第1四半期のデータによると、JPモルガン&チェース、バンク・オブ・アメリカ、シティグループ、ゴールドマン・サックスといった大手銀行が保有する現金は急増。一方米商務省経済分析局によると、個人の貯蓄率は約14年ぶりの低水準まで下がった。
インフレ率の上昇、サプライチェーンの混乱、金利の上昇、パンデミックの長引く影響、ウクライナで続く戦争など、さまざまな要因によって世界経済の状況は次第に不安定さを増し、こうした傾向が生じている。
アメリカ最大の銀行であるJPモルガン&チェースのジェイミー・ダイモンCEOは、6月4日に開催された年次戦略決定会議において、「これまで起きたことのないことが起きているときには、自分の予測能力を疑わなければならない」と述べた。
彼は会場を埋め尽くした聴衆に向かって、とりあえず手元に現金を持っておくことが将来のインフレから身を守る最良の方法であると語り、米経済に「暗雲」がたちこめているという前回の予測を、「ハリケーンの襲来」に変更した。このコメントは瞬く間に拡散された。
1年以内に景気後退
経済危機の到来を警告するのは、ダイモンだけではない。多くの専門家も同じ意見だ。ファイナンシャル・タイムズの世論調査によると、主要エコノミストの70%近くが、米経済は今後1年以内に景気後退に転じると考えている。
その結果、大手金融機関は、金融が不安定になったときの備えに通常より多くの現金を確保している。世界最大の資産運用会社ブラックロックは、ウォール・ストリート・ジャーナルの取材に対し、多くのアカウントでキャッシュポジションを50%以上引き上げていると語った。
株価の急落が続く中、大手金融機関は株式やその他の高リスク資産を減らし、キャッシュに換えている。こうして金融機関が損失回避に努める一方で、家計を圧迫する多くの脅威に直面して逃げ場もないのが一般の消費者だ。
5月の消費者物価統計によると、コア・インフレ率が上昇し、食品、エネルギー、住宅のコストが昨年からそれぞれ10%、20%、30%近く上昇した。
商務省経済分析局の最新データによれば、機関投資家の現金保有比率は今年第 1 四半期に 10 年ぶりの高水準に達したが、消費者の貯蓄率は今年4 月に4.4%まで低下し、リーマン・ショックで世界不況が始まった2008年9月以来の低水準となった。
June 15, 2022 at 03:29PM
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景気後退に備えて米大手銀の現金保有残高が急増、もうただでは引き返せない - Newsweekjapan
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