高知銀行は、高知大学発の起業を支援するベンチャーファンドを創設した。徳島大などでの創業支援で実績のある地域経済活性化支援機構（REVIC）の支援を受け、経営に詳しい人材の派遣など長期的な支援を手がける計画。年内にも2社への投資を始めるという。
ファンド名は「高知県発ベンチャー投資事業有限責任組合」（高知県発ベンチャーファンド）。高知銀が2億円など出資し、高知大、REVICなどと今年1月に設立。4月から本格的に業務を始めている。ファンドの存続期間は9年。
ファンドの運営や投資先の選定などは、3者で構成する高知産学連携キャピタル（AKAC）が担う。代表にはREVICの田中雅範マネージング・ディレクターが就き、高知大の須藤順准教授と高知銀の宮地憲一地域連携ビジネスサポート部長が取締役に名を連ねる。
REVICは企業の経営再建などを手がけてきた企業再生支援機構を改組し、地域経済の活性化などを図るために作られた官民出資の株式会社。これまでにも地方銀行と提携し、鳥取、島根、徳島の各大学で起業支援の実績がある。
◇
「地方をいかに活性化させるか。それが地方銀行の使命だ」。高知銀行地域連携ビジネスサポート部の坂口達郎さんは言う。
産業基盤の弱い高知では学生の就職先が乏しく、高知大では就職者の7割が県外へ出るなど人材の流出が進む。大企業が少なく景気回復の実感がつかめないなど閉塞（へいそく）感も漂う。
そこで、高知銀が目を付けたのが、大学で生み出される様々な研究成果。「アイデアがあっても資金がない研究者を支援し、雇用の場を生み出したい」
しかし課題もあった。銀行では融資を決める際に、相手の実績や財務状況といった「過去」を見て判断してきた。しかしベンチャーファンドでは、アイデアという「未来」に投資するなど勝手が違う。
AKACの取締役も務める宮地憲一・同部長は「アイデアの段階から事業化をするノウハウを身に付け、ベンチャーを育てられる銀行にしたい」と語る。現在は6人がファンド業務に携わり、研究内容を元に販路や量産化計画を助言し、投資先として適切か判断をしているという。
ベンチャーファンドの創設は高知大の悲願でもあった。大学の基盤的経費を支える運営費交付金は国の財政難もあって削減されている。高知大でも法人化した2004年度より年額で7億円ほど減り、研究環境は厳しさを増している。
「自分たちで稼がないと教育や研究が思うようにできず、魅力的な大学を作れないという危機感がある」。石塚悟史副学長は苦しい胸の内を明かす。
高知大の調査によると、660人の教員のうち5%ほどが「起業に興味がある」と回答した。しかし研究を続けながら会社を経営することは難しい。AKACにはREVICから複数の専門家が派遣されており、起業に向けて手厚い支援が受けられると期待する。
「起業はビジネスの側面だけでなく研究成果の社会還元という意味合いもある。専門知を世の中に還元し、社会に貢献する大学になっていきたい」
国は、世界トップレベルの研究力を目指す大学に10兆円規模の「大学ファンド」で支援をする方針だ。しかし対象は首都圏などの主要大にとどまりそうだ。
「地方は沈んでいいのか。そうならないためのモデル作りが必要」。REVICの田中雅範マネージング・ディレクターは言う。
REVICは15年に山陰合同銀行（松江市）と、島根大と鳥取大発のベンチャーを支援する2ファンドを創設。20年には徳島大発のベンチャー支援を行うファンドを組成し、阿波銀行（徳島市）が10億円を出資。食用コオロギを生産する「グリラス」などベンチャー3社に出資し、継続して経営支援を続けている。
「地方の大学には、ユニークで将来性のある研究成果がたくさんある。面白いアイデアをREVICの専門家がビジネスに導き、ファンドが投資することで企業が成長し、地域の活性化につなげたい」（羽賀和紀）
June 17, 2022 at 08:00AM
https://ift.tt/TvrOMne
地方の未来へ 大学ベンチャー支援 高知銀がファンド創設 - 朝日新聞デジタル
https://ift.tt/2sXjdUV
Mesir News Info
Israel News info
Taiwan News Info
Vietnam News and Info
Japan News and Info Update
Bagikan Berita Ini
0 Response to "地方の未来へ 大学ベンチャー支援 高知銀がファンド創設 - 朝日新聞デジタル"
Post a Comment