九州電化(福岡市東区、吉村浩司社長)は、抗菌マスクケースを製品化して発売した。コロナ禍で銅と銀が持つ抗菌性に着目した。開発には本業の表面処理技術を生かした。BツーB(企業間)取引が通常の同社にとって一般向け製品を販売まで一貫して手がける貴重な経験となった。その意義を吉村社長に聞いた。(西部・関広樹)
―製品化の経緯を聞かせてください。
「何か新しいことを始めなくてはと考えていたところ、病院関係者から食事中に外すマスクをどうにか(衛生的に管理)したいという話があり、開発をスタートした」
―抗菌製品やマスクケースが既に市場にある中で製品化に踏み切った理由は。
「抗菌試験をできる技術者が社内におり、いろいろな物を購入して評価したところ、思ったような効果がない製品も多かった。一方で銅メッキや銀メッキに抗菌効果があることは知っていた。自社で試験してみると効果があり、外部試験でも良い結果が出た。自社技術が生かせると考えて進めた」
―開発では、どのような点に工夫しましたか。
「当初は抗菌機能に集中していたが、外部の意見も参考にして改良を重ねながらデザインも重視した。名前を刻印でき、プレゼントやノベルティーに使える。ある会社からは、コロナ禍で開けなかった新年会の代わりに社員に感謝を示すプレゼントとして注文を受けた。顧客訪問時に顧客の名前を入れて渡すという会社もある」
―今回の経験を今後の事業にどう生かしますか。
「一から物を作って売る経験を積みたいとの思いもあった。自分たちで良い物を作り、値段も自分たちが決める。そういったプロジェクトを推進するきっかけにしたい」
―抗菌以外にもメッキは多くの機能を持っており、製品化の可能性は広がりそうです。
「今は業界を問わず抗菌は必要とされている。こういう物を抗菌にできないか、といった相談をしてもらえるようになればと期待している。メッキは従来、さまざまな機能を付加できる。我々さえ知らず、顧客に教えられることもある。一般には知られていないメッキの一面も打ち出していきたい」
日刊工業新聞2021年5月13日
May 14, 2021 at 03:42AM
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